ストーリー

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思い込みと人間関係

2015.06.6

「認識=存在」では、面白い体験を味わって頂きましたが、その後、みなさんの生活において、何か変化は起こりましたか?

脳の素晴らしくも一番恐ろしい特徴が、思い込みを事実として誤認してしまうことにあります。

経験をつくりだす脳

これはfMRIの進化により21世紀になってから登場した「社会神経科学」の分野でも実証されていることなのですが、知覚、記憶、注意、学習、判断のプロセスの多くを、意識的な認識の外側にある無意識が行っており、精神的な経験は脳によってつくりだされています。

人間の脳は、視覚や味覚などの経験を単に記録しているのではなく、それを創り出しているのです。

先日の記事で体験して頂いた方もいらっしゃると思いますが、静止している絵が動いて見えた場合、自分の認識した世界では「動く絵を見た・動く絵が存在した」ということが事実として記憶されます。

また、リストには存在していなかった「甘い」があったと答えたならば、「リストのなかに甘いという単語を見た・甘いという単語が存在した」ということが事実として記憶されていたことになるのです。

これらの例のように、種明かしがあったり、事実を確認したりしない日常の出来事であれば、わたしたちが見聞きしていることのすべてが「実際にそうだったのか」どうかを、今一度疑って観た方が健全なのかも知れません。

仮に「自分がそう認識した(思い込んだ)ことが事実だ」を前提に話を進めると、コミュニケーションがズレて、人間関係が悪化していくことになります。

思い込みによる人間関係への影響例

ひとつ例をあげてみます。

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ある職場にAさんとBさんがいました。

AさんとBさんは同期入社ということもあり、入社したての頃は仲良く会話をしていました。

ところがある日、BさんがAさんに話しかけようとした時に、Aさんが目を逸らしました。

一瞬の出来事でしたが、Bさんはそれを見て、「もしかして私は嫌われているのかもしれない…」と感じ(認識)ました。

それ以来、Bさんは「Aさんは私のことが嫌いなんだ」と思い込むようになって、BさんはAさんと距離を置くようになりました。

一方Aさんは、距離を置くBさんを見て「Bさんは私と関わりたく無いんだ」と思い込んで、2人の距離はさらに離れていくばかりでした。

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いかがでしょうか。
もしかしたら同じような経験をしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

このように、思い込みを前提に物事を進めると、人間関係に影響がでてきます。これが続けば、会社の業績にも影響していくでしょうし、リスクにしかなりません。

 

思い込みの外し方

それでは、思い込みを外すにはどうしたらいいのでしょうか?
色眼鏡やフィルター、信念と呼ばれることもある固い思い込みを外すには、事実を確認する以外に方法がありません。

動いているように見えた絵も事実は静止画ですし、リストの中に「甘い」があるかどうかも、事実を確認することで納得できたと思います。

また、先ほどあげたAさんとBさんの例もお互いが事実を確認したら人間関係が変わっていたかもしれません。

事実はこうでした。
あの時Aさんは、会議に使う資料を探すため、Bさんが話しかけようとしたタイミングでたまたま視線をデスクへ向けただけで、目を逸らしたわけでもなく、Bさんを嫌っていたわけでもありません。

それなのに、Bさんが事実を確認せずに「Aさんに嫌われている」と思い込んでしまったため、Aさんを避けるようになって、それを見たAさんも事実を確認することもなく「Bさんは私と関わりたくないんだ」と思い込んでしまったことで2人の距離が広がってしまいました。

事実を確認すれば、「なんだ、そうだったのか」と単なる思い込みだったことが分かって、最初からボタンを掛け違わずに済み、信頼関係が深まっていたかもしれません。

事実を確認する。
この方法はシンプルなのですが、実際に行動に移すのが難しい場合もあるかも知れません。

例えば自分で直接確認するのがはばかられる相手ならば、誰かその人と仲の良さそうな人に替わりに聞いて貰うという方法もあります。

重要なことは、自分の思い込みに気付くこと、または気付かせてくれる友人を持つこと、そして何よりも相手に質問する勇気です。

日々のコミュニケーションにおいては、相手の話を聞いた際に自分が受け取った意味を改めて確認するという方法もあります。

「いま田中さんがおっしゃったことを、わたしはこういう風に受け止めたのですが、この認識であってますか?」という風に、自分の理解に確信がないときには、少々手間でもひとつひとつ丁寧に確認しながら対話を進めることで、特に重要な仕事上のミスや認識のズレを防ぐことができるようになるでしょう。

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