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認識=存在

2015.06.5

普段、私たちは「目の前に様々な存在があって、それをありのままの姿で認識している」と思い込んでいますが、前回、認識の主体である私たち人間の脳(過去の記憶なども含む)や5感覚の条件が変われば、客体である、存在や現象が変わるとお伝えしたように、ありのままの姿で認識しているわけではありません。

少し踏み込んだ話をすると、私たちは「目の前に様々な存在があるから認識する」のではなく、私たちが「認識するから様々なモノが認識した通りに存在している」のです。

認識=存在

 

記憶のテスト

それでは、ここで「認識=存在」を体験してみる為に、ひとつテストをしてみましょう。

集中して次の単語のリストを読んでみてください。

このリストをじっくり読んだあとは、リストを隠して、次のセンテンスを読み進めてください。

読んでいる間、リストは見ないようにしてくださいね。

私もそうなのですが、たいていの人は十五桁の数字を覚えられませんし、友達の名前がでてこなかったり、仕事の帰りにクリーニング店に寄って仕上がりを受け取るのを忘れたりします。

カメラのように正確な記憶力を持つ人物や天才的な頭脳の持ち主ならば、リストにある十五個のすべての単語をすらすらと思いだせるのでしょうが、(幸いにも)我々の記憶の働き方はちょっと違っています。

 

記憶の働き

心理学者のダニエル・シモンズ(イリノイ大学教授)とクリストファー・チャブリス(ニューヨーク・ユニオンカレッジ教授)は、2009年に1500人を対象にアンケート形式で全国調査を行い、記憶の働きについて調べました。

「ある体験をして、それがいったん頭に刻まれたら記憶は変わらない」という項目には47%がイエスと答えており、63%の人が「人の記憶はビデオカメラと同じで、自分が見たり聞いたりしたものが正確に記憶され、のちに自分の中でそれを再現することができる」と考えていたのです。

みなさんはどう思われるでしょうか?

人の記憶はハードディスクと同じで、「事実」がありのままに記憶される。昨日上司に言われた嫌みな一言を忘れる訳がないし、初恋の人と初めてデートした場所をまちがって記憶している訳がないというのが一般的な感覚でしょう。

果たして、その考えは正しいのでしょうか?

それを確認するために簡単な質問に答えてみてください。

 

事実はありのままに記憶されるのか?


次の三つの単語のうち、どれが先程のリストにあったのか当ててみましょう。

答えは1つとは限りません、三つともリストにあったかも知れないし、あるいは1つもなかったかもしれないのです。少し考えてみて、答えを決めたら先程の段落に戻って、どれだけ正解していたのか、確かめてみましょう。

いかがでしたか?

多くの方は「パイナップル」はリストになかったと、自信を持って答えます。また、「味」はリストのなかにあったと記憶している方が多いでしょう。このテストの肝は、もう一つの単語「甘い」にあります。

この単語を見たと答えたのであれば、あなたの記憶は実際のリストではなく、その要点の回想に基づいていることになります。

「甘い」という単語そのものはリストに存在していませんでした。

しかし、リストに挙げられていた単語のほとんどが甘さという概念と意味的に関係があるものでした。

記憶を研究するダニエル・シャクターによれば、同様のテストを大勢の聴衆に受けさせたところ、大多数の人が実際にはなかった「甘い」がリストに存在していたと言い張ったと言います。これは何を意味しているのでしょうか。

実際にはリストに存在していなかった単語を、甘さという概念と結びつけて認識したため、リストに「甘い」が存在していると思い込んだということです。

 

認識=存在

いま経験していただいたように、事実と認識は必ずしもイコールであるとは限りません。
人間の脳はテープレコーダーのように正確に物事を記憶する機械ではないのです。

「存在するから認識する」のではなく、「認識するから存在している」ということをご理解いただけましたか。

記憶には実際に起きたことと、起きたことに対する自分の解釈の両方が混じり合う性質があります。

私たちは経験したことを事実だと思いがちですが、真実はその逆で、我々の脳が事実と解釈を材料に経験を創り出しているのです。

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