2021.04.12
目次
一般的に「潜在意識」を説明するときは、氷山の絵が用いられます。水面より上に出ている氷山の一角が1%の顕在意識で、水面下に隠れている氷山の本体が99%の潜在意識である、という絵です。
「ああ、たしかに見たことがある」という人もいるかもしれません。そして同時に、こんな疑問も出てこなかったでしょうか。
「肝心の潜在意識の99%の中身はどうなっているのだろう?」という疑問です。
この99%の構造を、誰にでもわかるシンプルな一枚の絵でまとめたのが下の図で「潜在意識の五階層」と呼んでいます。
潜在意識はピラミッドのように「アイデンティティー」「エネルギー」「イメージ」「感情」「思考(考え)」という5つの階層で構成されています。
この層の下の方に行くほど無自覚になり、同時に影響力も強まります。潜在意識の根底にあるアイデンティティー(自分自身をどう思うのか、どう規定するのか)によって、エネルギーやイメージがつくられ、そのイメージに応じて考え・感情が生まれてくるのです。さっそく図の上部から順に説明してまいりましょう。
氷山の一角である「顕在意識1%」にあたるものが、「表情・言葉・行動」です。
人は、相手の表情や言葉、行動など目に見える要素をベースにコミュニケーションを行っていますが、その表現(表情、言葉、行動)が生まれる背景にあたるのが、99%を占める潜在意識です。
表情よりも言葉、言葉よりも行動のほうがより強く相手に訴えかける力を持っていますが、行動を生み出すにはそれだけ強い想いやエネルギーが必要となります。表情には出ているが言葉にしない、発言はするが行動はしない、というように、そのエネルギーの濃度によって現れ方は異なってきます。
そんな表情・言葉・行動を生み出している要素が、「考え・感情」です。夫婦ゲンカの際に正論を言っても相手が行動を変えないように、「考え」より深くにある「感情」が納得しなければ人の行動は変化しません。
では、人間の考え、感情を生み出しているものとは、いったい何でしょうか?
それは過去の経験、体験からくる「イメージ」です。
イメージのなかには、先入観や価値観、〇×、善悪、好き嫌いといった判断基準(判断のモノサシ、色眼鏡、フィルター)、「~しなければならない、~であらねばならない」といった強迫観念や固定観念なども含まれます。
また、単語に対するイメージもこの層に収納されています。
たとえば「アップル」と聞いたら、皆さんは何をイメージされますか?
ある人は、果物の赤い「リンゴ」をイメージし、ある人はスティーブ・ジョブズの「アップル社」やiPhoneなどの製品をイメージします。中には「白雪姫」や「ニュートン」と答える方もいるでしょう。アップルといったシンプルな単語でも、それぞれの人が抱くイメージは様々です。単純な単語一つでも一人ひとりの頭のなかで展開されているイメージが全く違うということは、複数の単語を用いた文章になれば、なおさらイメージのズレは広がっていく一方です。
こうして認識がズレることでコミュニケーションがズレるのですが、「単語=イメージ」のつながりが人によって違うと理解できているだけでも、コミュニケーションのミスを減らすことはできます。
4階層目の「エネルギー」は人間の内にあるものです。
電池のエネルギー残量が少ないとラジコンが動かないように、人もやる気やモチベーションなどのエネルギーが少なければ、活動する気力も湧きません。逆に若い人やエネルギッシュな人(エネルギーのある人)は、元気で活動的です。
感情や行動の源にあるエネルギーは、潜在意識の深いところにあるので、元気があるフリをすることは簡単ではありません。
5階層目の「アイデンティティー」は「自分自身をどう思うのか?」といった自己認識です。たとえば、名刺に書かれている肩書やその人の出身地、性別、所属する組織・団体や人種・民族・国家・宗教などもアイデンティティーを構成しております。
これは単に自分が意識できている自己イメージだけではなく、日頃は意識することのない「私はこういう存在だ」、「私は~~~な人間だ」といった自己認識が含まれています。
例えば、あなたが上司からランチタイムに「焼肉おごるよ!」と誘われたらどう感じますか?
お肉が好きな人なら「やった~!」と喜びますが、ベジタリアンだと「え~」と感じて誘いを断るかもしれません。しかし私は昔、相手のことを知らずに焼肉ランチに連れて行ってめちゃくちゃ怒られたことがあります。「神を殺して焼いて目の前に持ってくるなんて、うちの国ならあなたは死刑だよ!」と。
ヒンドゥー教には牛は神の使いである、という教えがあり、インドでは神聖な生き物として扱われています。堂々と道の真ん中を牛が歩いているのは日常風景で、インドで起業した友人も「車で人を跳ねても警察に捕まらないが、牛を跳ねたらすぐ捕まる」と言うほど。
そんな厳格なヒンドゥー教徒の方からすると、「焼肉」ではなく「殺された神の使い」として映っていたのです。目の前にある物体は同じでも、それに対する「イメージ」が違うだけで、喜び・無関心・怒りと、人によって異なる感情が沸いてきます。
このように「イメージ」や「アイデンティティー」に目を向けると、相手がなぜそのような感情を抱き、そのような言動をとるのか?が理解できるようになります。このフレームワークは”自分自身の言動の源”を理解する為に使うこともできますし、”相手がなぜそのような言動をとるのか”を理解する為に活用することもできます。
ぜひ、潜在意識の五階層を活用して、あなたも他者理解を深めてみてください。
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