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「伝える力」に直結する〜質問力を高める7つ視点~

2015.05.14


コミュニケーション能力とは?という記事の続きです。

前回は、ビジネスの現場で最も重視されるコミュニケーション能力とは何かを整理するために、「コミュニケーションは、input/think/outputの循環である」と定義し、主にインプット(聞く力)についてお伝えしました。

今回は、アウトプットに当たる「伝える力」について整理していこうと思います。

伝える力(アウトプット)のレベル

伝える力のレベルは次のように定義しています。

◆アウトプット(伝える)

Lv0:相手に聞く意思がないためまったく伝わっていない

Lv1:聞く意思はあるが誤解されて伝わってしまう状態

Lv2:聞く意思はあるが正しく理解されない状態

Lv3:相手が関心があり趣旨が伝わる状態

Lv4:相手に強い関心があり趣旨と背景が理解される状態

Lv5:伝え手が何者でどういう背景からそれを話すのか理解されている状態

Lv6:反対意見を持つ人が理解できる

Lv7:反対意見を持つ人が理解し、賛同できる状態

現在のレベルを自覚することが次のレベルに進むための第一歩になりますが、あなたの伝える力はどのレベルでしたか?

次に、伝える力の要点をみていきましょう。

伝える力の要点

伝える力の要点は「相手の聞く意思をどうつくるか(器づくり)」にあります。

お腹の減っていない人に食事を出しても食べないように、相手が求めていない情報を幾ら押し付けたところで、それを受け取って貰うのは至難の業です。

では、どうすれば相手に自分の意図やイメージを伝えることができるのでしょうか?

話を聞く器をつくる道具=「質問」

その為に必要なのが「器づくり」です。
料理であれば、時間が経つか運動をすることでお腹が空いて美味しく料理を味わうことはできますが、情報知識を美味しく受け取ってもらうためには、あなたが伝えようとしている情報や意図、イメージなどを相手が「必要だ」と感じたり、「それを知りたい」と望むような状態になっていただく必要があります。そのための道具が「質問」です。

あなたが伝えようとしていることが、相手にとって「自分ごと」だと感じられる質問を投げかけ、あなたの求める行動を取ることが、自分の目的達成につながると「理解できる」気付きを促すことが重要です。

その為にも相手の立場や背景と目的を理解し、相手の考えやイメージを汲み取り、相手の思考回路に沿って話を展開することが必要なのですが、実際にそれをやるにはエグゼクティブコーチと同じぐらい高いレベルの質問力が要求されます。

そうなるには専門的な知識や多くの実践経験が必要になってしまい大多数の方が取り組むのは非現実的なため、具体的にどんな質問を投げかければ良いのか?例え話を通して観ていきましょう。

 

例え話を通してどんな質問が必要か考える

むか~し、むかし、あるところに、生命情報学会で発表する内容(PPTのプレゼン)を作成している3人チームがありました。

3人のうち、AさんとBさんは自分の研究室を持つ大学教授で、2人は違う大学でした。Cさんは民間企業の経営者ですが、研究部門を有する中堅企業の研究者としての一面もあります。

50代のAさんが論文の内容を考え、実験データを提供した発起人だったのですが、若手にチャンスを与えようと想い、Bさんに発表を任せることにしました。

30代のBさんはAさんとは近い分野の研究者ですが、まだ業界では認められておらず、これを機に自分を売り込みたいと考えています。

40代のCさんも2人と同じ分野の研究者ですが、ちょうど異なるデータと意見を3人分持ち合わせることで新しい論文に必要な要素が揃う為、共同で発表することに同意してチームを組みました。

ところが、2回目の打合せの際、Bさんが持ってきたプレゼン資料を見た2人は愕然とします。

プレゼン資料の名前の部分にチーム名はなく、Bさんの研究室の名前だけが記載されており、論文発表に先立つ研究者紹介ページもB研究室の紹介だけでした。

続くプレゼン内容は主にAさんが考案した内容がそのまま掲載されており、その後のデータもCさんが提供したものです。

この資料を見た2人は怒ってBさんに言いました。
・論文発表は、あなたの宣伝タイムじゃない
・これだとBが1人でやった研究のように見える
・研究者の紹介は最後でよい、中身を先に発表すべき
・紹介欄も発起人のAさん、Bさん、Cの順にすべき
など、それぞれが思うところを伝えたのですが、

Bさんは
・もちろん2人の名前も載せるけど
私が発表するんだから、自己紹介ぐらい先にしたい
・貴重な発表の機会だからスポンサーを獲得したい
・その窓口も私が担当する!
と言って譲りません。

困ったAさんは、Bさんに発表の機会を与えたことを少し悔みながら、親心であれこれとアドバイスするのですが、Bさんはまったく聞く耳を持ちませんでした。

実は、Bさんには大きな借金があったのです。その借金を返済し、研究活動を維持し続ける為にも、今回の論文発表を機に新しいスポンサーを獲得しなければならない。そんな想いが胸の内にありました。

借金のことを奥さんから聞いていたCさんは、思案して尋ねました。
C「Bさんは新しいスポンサーを獲得したいのですね?」
B「ええ、そうですよ。」

C「スポンサー候補者は、論文発表の何を評価すると思いますか?」
B「そりゃ当然、研究内容でしょう。自社の商品開発に使えるかどうかです。だから今回は私の研究結果が最もインパクトがあるし、企業にとっても価値があるはずなんです!」

C「その点はおっしゃる通りだと思いますよ。では、実績やチームとしての観点はいかがですか?」
B「まぁ確かに実績がある人の方がいいでしょうねぇ。私にはないですけど。」

C「Bさんだったら、チームプレイができる助手と個人プレイしかできない助手のどちらを採用されますか?」
B「もちろん前者ですね。って、何が言いたいんですか?」
A「チームプレイが出来る人には投資が集まるってことだよ」
B「まぁ、確かに・・」

A「私は15年前に望月先生と一緒に発表した論文のおかげで、今の企業スポンサーを獲得することができた。先輩は、当時実績のなかった私にチャンスを与えてくれたんだ。そんな私が、どうして今回、君に声を掛けたと思ってるんだい?」
B「・・それは、、若手にチャンスを与える為・・ですよね?」
A「そうだよ」

C「Bさん、スポンサーを獲得して研究助成の契約を結ぶ手続きを実際に進められたことってありますか?」
B「いやぁ・・」
C「じゃぁ、窓口はAさんにお願いして、一緒に進めながら学ばせて頂くっていうのはどうでしょう?」
B「ええ、、その方が着実ですね。」

A「君は研究能力は高いけど、人間力をもっと磨かないとな。ところで、プレゼンは自分でやってみたいかね?」
B「なんか話をしてて気付いたんですが、Cさんの方が経営者として場慣れされてるから安心感があるし、Aさんの顔を立てた方がスポンサー受けもいいと思うようになってきました。僕なんかが前に立っていいんでしょうか?」

A「なら3人で一緒に壇上に立つとするか」
C「Aさんもチャンスを与えたいって仰ってるんだから、自分の研究内容を発表するぐらいはチャレンジしてみたらいいんじゃないですか?」
B「はい、それでお願いします!」

こうして3人は連携プレーで研究発表を成功させ、みごと大手スポンサーとの契約も決まりましたとさ、めでたし~めでたし~。

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この例では、最終的に研究発表を成功させることができましたが、相手や状況によって質問の仕方や内容が変わってきますので、やり方だけを真似するのが難しいのが質問のスキルです。この例え話をもとに、どの視点で質問をしたらよいのかをパターン化して理解してみましょう。

 

質問力を高める7つの視点

1.相手の目的・意図を確認する

「Bさんは新しいスポンサーを獲得したいのですね?」

当たり前のことや前提を確認するのは意外と重要ですが見落としがちなポイントです。前提がズレているとその後の話に意味がなくなりますので、最初は相手の目的や意図、最終ゴールのイメージを確認してみてください。

2.視点を変える質問

「スポンサー候補者は、論文発表の何を評価すると思いますか?」

今回クライアントにあたるBさんの目的がスポンサー獲得だった為、その対象者から自分自身(この場合はBさん)がどう見えるか?を想像させる質問を投げています。営業シーンの場合「顧客に君のプレゼンはどう映ったのか?」、IRであれば「株主に今回のニュースがどう認識されたのか?」など、視点を変える質問で担当者が気付くことは少なくないはずです。

3.承認と観点移動

「その点はおっしゃる通りだと思いますよ。では、実績やチームとしての観点はいかがですか?」

何かを伝える際に、深い相互理解や信頼関係は外せません。敵対しているシーンにおいても相手の考えを認める、褒めるなど、存在承認することは関係構築の要となってきます。その上で、こちらが伝えたかった・気付かせたかったポイントと違う回答が来た場合は、「~~の観点ではどうでしょう?」と違う観点に移動させる質問を投げることで話を横にスライドさせてみてください。

4.当然すぎる二者択一

「Bさんだったら、チームプレイができる助手と個人プレイしかできない助手のどちらを採用されますか?」

「そんなもん、聞かれなくても当然こっちやろ!」と怒られるような分かり切った質問は意外と使うシーンが多いです。漠然と考えていることを、あえて言語化させることで、対話のまな板に載せるのがこの問いです。また逆に、相手に決断させ、方向性を明確にさせる効果もあります。

このケースでは、スポンサーの観点に立って貰った上で、投資の基準=採用基準に例えてスポンサーの感覚が「自分ごと」としてイメージできるように導いています。

5.エンディング・クエスチョン

「そんな私が、どうして今回、君に声を掛けたと思ってるんだい?」

ストーリー・物語を語った後に、最後の結末(エンディング)を予想させる・考えさせる質問をエンディングクエスチョンと呼んでいます。今回はAさんの昔話からつながって、Bさんを応援する気持ちをダイレクトに伝えずに相手に尋ねることで思い出して貰おうという意図が観えますね。

6.事実確認

「Bさん、スポンサーを獲得して研究助成の契約を結ぶ手続きを実際に進められたことってありますか?」

過去の事実、相手の能力、経験、スキルなど、シンプルに事実を確認する質問には強い威力があります。(思い込みをベースに考えを発展させるケースが多い為)この場合、事実を確認後、初めての契約締結を一緒に進めて行くことで学びましょうと呼びかけ、相手の変化成長へ資する姿勢を打ち出しています。

7.提案型の問い

「じゃぁ、窓口はAさんにお願いして、一緒に進めながら学ばせて頂くっていうのはどうでしょう?」

「~~しろ!」と命令されれば嫌な気持ちになりますが、「~~するのは如何でしょう?」と質問されると、決定権が自分にあるので、心に余裕を持って考え、受け止めることができます。

何かを伝える際にも「あなたは~~すべきだ」よりは「~~したら、あなたはもっと素敵だと思うんだけど、どう感じる?」など、提案型の問いに変化させることで、相手の受け取り方は180度変わります。

 

以上、質問を考える際の参考になりそうな7つの視点を挙げてみましたが、いかがでしたか?
エグゼクティブコーチのような高度な質問スキルを持っていなくても、この7つの視点で質問を投げかけることで、相手の心の中にあなたの話を聞く器ができ、結果的にあなたが伝えたい意図や情報を受け取ってもらいやすくなります。

ぜひビジネスの現場や日常でのコミュニケーションに取り入れてみてください。

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