ストーリー

Story

考えのお散歩(マインドワンダリング)

2015.07.8

過去の記事「コミュニケーション能力とは?」の中で、「コミュニケーションとは、input/think/outputの循環である」と定義しました。そして、その中でも、INPUT=聞いた話をどう認識するかが重要だとお伝えしました。

話を聞くことが重要だと分かっていても、なぜか相手の話が頭に入って来なかったり、そもそも聞いていないことがあります。

それでは、なぜ人の話を聞けないことが多いのでしょうか?

なぜ人の話を聞けないのか?

自分の「観点」が固定している状態だと、相手の話を聞いていても常に「自分の考え」ばかりが沸いてくるので、頭の中に100%相手のイメージ、考え方、言葉が入ってくるという状態にはなりません。

相手の話を聞いているつもりでも、実際には思考がいろんな方向へお散歩に行ってしまっています。その状態を「考えのお散歩」と呼んでいます。

考えのお散歩とは

例えば会議で上司が話しているときに「A社」という単語を聞いて

「そういえば、A社に出した見積の返事まだだったなぁ。そろそろ発注書もらわないと納期に間に合わないんだけど、あの人いっつも〆切直前に連絡してくるんだよなぁ」

と考えが他の方向へゆき、

「あ、いかんいかん」と上司の話を聴くよう意識を向けた後に

「Bさんの部署は」という一節を聞いて

「それ、前にも言ってたなぁ。Bさんの部署と比べられても、うちは産休で二人休んでるんだから、売上高がその分落ちることぐらい考慮に入れて貰ったっていいのに・・」

などと考えの方向性が会議の内容とはズレた方へお散歩しはじめます。

ふと我に返って相手の話に集中しても、

「来月の売上目標は・・」という話に差し掛かったあたりで

「この目標って、勝手に上層部が決めて下ろしてきた目標でしょ?現場のこっちは必死にやってるのに、これ以上残業しろっていうのかよ。ほんっとこの会社は人使いが荒いなぁ。転職でもしようかな?転職と言えば同期の松本は今期で辞めるって噂を聞いたけど、あいつどこに行くつもりなんだろう。まさか競合?」

などとまた違うことを考えてしまうのが考えのお散歩の特徴です。

そうこうしているうちに話が終わっていて「君はどう思う?」と意見を求められたけれど、話の内容の40%も聞けていなかった、ということはないでしょうか?

マインドワンダリング

認知科学では「考えのお散歩」のことを「マインドワンダリング」と呼び、「日常的な認識の50%は、自然発生的な考え、マインドワンダリングによって占められている」と言われています。

人は自分が聞きたい部分だけを都合よく取るので、相手に対して抱いているイメージどおりの発言があれば拾って、イメージと違う部分は切り捨ててしまっています。

部分だけ取って、都合よく繋げ合わせ「思い込み」をつくることは以前お伝えしましたが、まさに「話を聞く」段階から50%以上の情報を取り損なっていては、正しく相手のことを理解できるはずもありません。

会議や相手の話を聞くときは、自分が考えのお散歩に行っていないか観察し、もし聞いていなかったら正直に「すみません、いま他のことを考えてて聞いていなかったので、もう一度教えて貰えませんか?」と素直に尋ね直してみましょう。

もし「なにぃ、話を聞いてなかっただと?」と怒る人が相手だったら、人間の脳にはこういう特徴があるんだということを伝えてあげてください。

人間なら、日常的に考えの50%がマインドワンダリングによって占められています。その「脳の特徴」は誰にでもあります。

よって、それはあなた個人のせいではありません。それは上司も部下も恋人や家族でさえ、皆同じ条件の脳みそをもっているのです。

あなたが上司なら、脳のデフォルト設定(初期条件)に対して怒るのではなく、自分の非をOPENにして尋ね返してくれた相手の素直さと勇気を褒めてあげてください。

「ズレる」ことを前提に、対話がスタートするのです。

関連記事

書籍紹介

世界が一瞬で変わる潜在意識の使い方
Amazon 1,540円

潜在意識の構造を21のフレームワークで解説したビジネス書。2015年10月にAmazonランキング2位を獲得し、2018年4月にも明林堂書店の週間ランキングで3位にランクインするなど、根強い人気を誇る。

ツール紹介

対話するトランプ2
Amazon 2,980円

コミュニケーション能力を測定できるカードゲーム。採用試験で応募者のコミュニケーション能力を数値化して把握することができ、営業社員の能力開発にも最適。研修やグループワークで人気の一品。