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なぜ相手の話を聞けない人が多いのか?

2022.06.4

「話を聞けない」原因は脳の構造にあった

会社での会議中に他のことを考えていて、急に質問をされたとき「えっと、なんでしたっけ・・?(やばい!話を聞いてなかったなんて言えない!)」と感じた経験はありますでしょうか?

「報告会議の最中に話を聞いてない部下がいる」「うちの旦那が、私の話を聞いてくれない!」「上司に提案しても話を受け入れて貰えない」など、“話が聞けない案件”はあちこちに転がっています。

これは相手もそうですが、自分もそう。

あなたは誰かと1対1で話をしているときに、その相手の話を「100%フラットな視点で聞けている」という自信はありますか?

おそらく、ほとんどの方は、相手の話を聞きつつ同時に「自分のこと」を考えてないでしょうか?

(なんでこんなこと言うんだよまったく…)
(そういえば、前もこの話をしていなかったっけ…)
(それって私に対する当てつけかな…)

相手の話を聞いているつもりで、実は思考が様々なところに飛んでしまっている。そんな状態を「考えのお散歩」(専門用語でマインドワンダリング)と呼びます。

マインドワンダリングとは

たとえば、上司が話しているときに「C社」という単語を聞いたAさんは「そういえば、C社からの見積もりの返事がまだだったよな…。そろそろ発注書をもらわないと納期間に合わないのに、いつも〆切直前に連絡してくるんだよな…はあ…。」と考えがほかの方向へお散歩してしまいます。

ふと我に返って上司の話に集中していても、「来月の売上目標は…」という話に差し掛かったあたりで、「この目標って、勝手に上層部が決めた目標だよね?また残業しろよっていうのかよ。本当にうちの会社は人使いが荒いよなぁ。残業増えるの嫌だし、転職でもしようかな。転職と言えば、同期の高木が辞めるって噂を聞いたけど、あいつはどこに行くつもりなんだろう…」などと違うことを次から次へと連想してしまいます。

認知科学では「考えのお散歩」のことを「マインドワンダリング」と呼び、「日常的な思考の50%は、自然発生的な考え、マインドワンダリングにより占められている」と言われています。

話の半分も聞けていない?!

ということは、私たちは特に意識せずに話をしているとき、実に50%の情報を聞き逃していることになります。これは人類の進化上の理由があってそうなってきたのですが、一方で「いまここ」に集中できないという点では不便な機能です。

私たちの脳は、話の半分も聞いていない上に「自分が相手に対して抱いているイメージ」通りの発言があれば、「その部分」だけ受け取って「イメージと違う部分」は無視しています。

テレビの街頭インタビューで、番組の構成通りの「答え」が切り取られて放送されていますが、それと同じことを私たちの脳も日常的に行っているのです。

自分に都合のよい部分だけ受け取って考えのお散歩へ行くので、スマホに届いたメッセージの文面から相手の表情や意図までも想像して、勝手に思い込み、それが真実なのだろうと錯覚していきます。

こうして人間関係におけるすれ違いやトラブルに発展し、これが仕事ならクレームや損失につながっていくのです。

そういう失敗を防ぐ為にも、みなさんも人と話をしているときに、「あ、今自分が考えのお散歩に行って聞いてなかった!」と気づく瞬間を増やして、意識して傾聴するように心がけてみてください。

妻が誕生日に欲しかった物は・・?

考えのお散歩による家庭内トラブルの例として、ある夫婦と息子のひろかず君(6歳)の3人家族での会話を聞いてみてください。夫は夜遅くまで仕事をしており、帰宅直後の夫婦の会話から始まります。

夫「ただいまー。」
妻「おかえりなさい。今日は遅かったわね。先に夕飯済ませちゃってるから。」
夫「ああ、すまんね。」
妻「てか聞いてよ。今日ひろかず帰ってきたら足にけがして帰ってきたのよ!服も汚れてるしまた友だちとケンカして…」
夫「え、そうなの?(また始まったよマシンガントーク。こっちは疲れてるのに次から次へとよく言葉が出てくるな。毎日疲れたとか言っておきながらすごい体力だよ。あーあ、この話いつ終わるのかなあ…)」
妻「…それで隣の奥さんったらまた回覧板私に渡すの忘れて…」
夫「へー?(あれ?いつの間に話題変わってたんだ?ひろかずの話はどうしたんだ?あいつまた友だちとケンカして…困ったやつだな。土曜日は仕事ないし、あいつと一緒に公園にでも遊びに行くか。)」
妻「ってわけでね、お願いがあるの。ケーキを明日の帰りに買ってきてくれないかしら。飾り付けはこっちで準備しとくから。明日はノー残業デーでしょ?」
夫「おー、ケーキな。わかった。(やれやれ、ようやく話し終わったよ。今日も疲れた。ケーキ買うの忘れないようにしないと、怒られるぞ…最近疲れてそうだし、奥さんの好きなチョコケーキでも買ってくるか。)」

そして翌日、夫はチョコケーキを買って帰宅します。

妻「…なにこれ?」
夫「え、だってケーキ食べたかったんだろ?」
妻「なんでチョコケーキなのよ。」
夫「え?だってお前好きだし…」
妻「今日何の日かわかってる?」
夫(顔面蒼白)
妻「ひろかずの誕生日だからケーキ買ってきてほしかったの。ひろかず、チョコ嫌いって言ったよね?てか知らなかったの?あの子、チョコ嫌いなんだけど。」

泣き叫ぶ息子、噴火状態の妻、金縛り状態の夫。ひろかず君の誕生日は、悲惨な日になってしまったのでした…。

夫の認識は、どうなっていたのか

ここで夫がどのように奥様の話を聞いていたかというと、以下の通りです。

  1. 疲れてしまっている自分の状態に注意が向かっており、はやく妻の話が終わってほしいと考えていた。
  2. ①の状態から話題が転換していることに気づかず、話についていけてない。
  3. 「ケーキ」という単語から妻が食べたいのだと思い込み、妻の好きなチョコケーキを買ってしまった。
  4. 結果、悲惨な誕生日パーティーとなってしまった。

まさに、夫は「考えのお散歩」状態で妻の話を断片的にしか聞けていませんでした。

自分に都合よく受け取って、思い込んだ行動の結果、妻を残念がらせ、息子を泣かせてしまうことになったのです。

考えのお散歩がなくなると・・

この夫は「もう同じ失敗は繰り返したくない」と感じ、「自分も考えのお散歩をしている」ことを自覚する習慣をつけました。

すると、似たような場面に出逢ったときに、次のような対応を取るようになりました。

  1. 妻が話を始める前に、疲れている自分の状態を伝え、大事な話なら後で確認してくれるように頼む。
  2. ①により、話を聞く状態を整えて、誤解してもすぐ軌道修正できるように。
  3. 一部分の「単語」をとって思い込むのをやめ、相手の意図を確認するようになった。
  4. 結果、次の誕生日は家族全員が笑顔で迎えられた。

昔の状態では家庭内でもストレスを貯め、疲労がさらに蓄積していたでしょう。いまの旦那さんは、家族との会話も増え、些細なストレスもなくなったと仰っています。

考えのお散歩は誰もが日常的にやっていることなので、意識して「相手の話を聞こう」としなければ、約半分の情報は流れていってます。

あなたの大切な方と良好な関係を築く為にも、自身のマインドワンダリングに気づく習慣をつけてみてください。

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