2021.06.1
目次
石山:まず始めに、従業員数が50名に至るまでのステップを、社長1人の第1段階と、社長プラス6人でコアメンバーができた第2段階、7人×7人で49人の第3段階というふうに3ステップに分けて考えています。まず、第1段階の課題は「商品」を決めて開発することと、それを「売る」こと、この2点に尽きます。
第2段階では社長とコアメンバーの6人が複数の役割を兼務しながら仕事を進めます。社長とメンバーが直接コミュニケーションを取っているので、社員も社長の考え方を理解しやすい環境にあります。第3段階では、コアメンバー6名が今度は幹部となって、それぞれに7人ずつ部下がついているような状態になります。
このステージになると、会社組織は『社長・幹部・社員』という3階層になっています。幹部を通じて話を聞いている社員は、社長の考えを大体理解していますから、理念とか方向性とか何をやっちゃ駄目で、どういうことが評価されるか、大まかに把握できている状態です。
問題は50人を超える第4段階以降。組織の構造が『社長・幹部・社員』の3階層から『社長・部長・課長・社員』のような4階層になるので、ここから認識のズレがすごく増えてくるんです。ですから、従業員が50人になるまでに色々と準備をしておくことが大事です。
従業員数が50人に到達するまでに何が起きるのか?というところをシンプルに話すと、まずは「1人から2人の壁」に出逢います。創業者が何でも自分でやってしまうタイプの人の場合、他人に助けを求めるのが苦手なのでチームを組もうとしません。自分で何でもやってしまう症候群の人は、それだけで売り上げを3000万円分ぐらい損しているということに気づいたほうがいいですね。
次に2人以上になったときに起きるのが、社長が商品開発と営業を兼ねている場合、その他の社員に対して、「俺がこれだけ売り上げを上げているんだから、これやれよ」みたいな上下関係が生まれやすくなります。お互いに持ちつ持たれつではなくて「俺が数字を上げてるんだから、後はお前がやれよ」という感じになってくる。そうなると、そこから歪みが生まれるケースはよくあるなと思いますね。これがお互いにできないことをやってもらっているんだという、相互に尊重できている関係からスタートすると、その後はうまく行っているように感じます。力で支配するピラミッド組織になるか、相互理解と尊重をベースとするティール的な組織に近づくか、この時点で分岐してると言っても過言ではないでしょう。
次の壁は10人を超えてからでしょう。10人以内のときは、何とか目が届くしコミュニケーションも取れますけれども、10人から20人、30人となると、社長が毎日全員とコミュニケーションを取れなくなるんです。大体8人を超え始めるとそうなりやすいですね。そうすると、誰かを介してコミュニケーションを取る状態になるので、社員の中には自分がよく把握できていない人が出てきます。よく把握できていない人=何の仕事をしているか分からない人ですから、自分自身でマネジメントしながらも、その部下を幹部にどれぐらい任せるかという線引きが大事になってきます。なので、関係性に甘えたり雰囲気を察しながら出来ていたことも、会社としての判断基準や理念や行動規範という形でロジカルに文章化する必要が出てきます。
加えて、それぞれの役割は何だったかと改めて確認する必要が生まれてきて、『皆が多くの仕事を兼務する状態』から『この人はこの役割がメイン』という風に役割分担が進んでいきます。これが進むと「この仕事は私の担当ではありません」と言われることも増え、誰もやらない仕事が急増します。社長やNo.2がそれを全部拾っていっぱいいっぱいになっている風景を、50人ぐらいまでの組織で多く見かけます。例を言うと、専務とか役員をやっている人が人事も広報も総務も法務も1人でやっているような感じ。でもまだ新たに人を雇えるような状態ではないし…というところで、色々な苦労が出てくるのが50人までですかね。
インタビュアー:先ほど50人を超えるまでに色々と準備をしておいた方がいいという話もありましたが、50人を超えたらまた加速度的に状況が変わっていくということですか?
石山:そうです。50人を超えて、例えば、100人近いときに理念をつくり直すとか制度をつくり直すと、そのあと現場に落とし込むのは大変です。だから、50人になる前に理念や制度の骨格だけでもつくって、それを普段から伝えておいた方がいいんですよね。どういう人を評価するのか。どういう人は評価しないのか。理念がないとそういうのも言えないので、なるべく早いうちにつくっておいた方がいいですね。
インタビュアー:どういう人を評価するとか、どういう人を評価しないとか、そういうのが決まった上で組織を大きくしていくとトラブルになりにくいということですか?
石山:そうです。例えば、何となく仲良しチームでWEB制作会社を始めたら、売り上げが上がって従業員が40人ぐらいになったという会社があったとします。その頃やっと余裕ができたので、社長が「俺は、本当はメディアの事業がしたかったんだ」と言って、メディア事業を始めるんですけど、それまでしてきた仕事と全然関係がないから、「何で急にメディアをやるんだろう?」って周りの理解が得られないんですよ。やりたいことが見つかって社長だけは乗り気だけど、他の人は全く興味がないので「社長、何か別なことを始めちゃったね」と社内が変な空気になってしまいます。もともとそれがやりたいと言って集まってきた仲間であればいいのですが、社長だけが急に考えが変わったら、皆がついて来ない。そういう理由で分社した例もありますね。
インタビュアー:文化にせよ制度にせよ、ある程度大きくなるまでに準備をして整えておいた方が、企業の成長スピードは加速するということですね。
インタビュアー:社長の言うことを聞きすぎる社員と言うことを聞かない社員がいると思うんですが、会社にとってはどちらの社員が多い方がいいんでしょうか?
石山:どっちが沢山いても困ります(笑)まず、松下幸之助さんをイメージしていただけると分かりやすいんですけど、創業者が神格化されている場合は、言うことを聞きすぎる社員になりがちですね。本気でやろうと思ったら、建設的な反対というか、「それって、どうなの!?」みたいな突っ込みって必要じゃないですか。でも、皆イエスマンになってしまって、それが原因で事業が形にならない危険性もあるんです。逆に、言うことを聞かない社員が多すぎると、社長が社会貢献をしたくてCSRやSDGsを始めても、「ああ、また社長が何か言ってるわ」という感じで右から左に受け流されてしまって形にならない。
これって、やっぱりどちらも駄目じゃないですか?1番いいのは、適切に正しいフィードバックをくれる関係です。社長が間違っていたら「それは違うんじゃないの?」と突っ込んでくれたり、「こんな情報もありますよ」と教えてくれたり、上下(関係)というよりはお互いに支援し合える、突っ込み合える関係をつくっておくと意思決定の質は上がります。
インタビュアー:そういう関係でいるために社長は何をすればいいんですか?
石山:私はこんな会社をつくりたいと最初に決めることが大事です。それがもしトップダウンの軍隊みたいな会社だとしたら、黙って言うことを聞けという経営方針になるので、それでいい人しか入らないわけですよ。逆に、うちはクリエイティブな会社だから皆がアイデアを出し合うブレストを大事にしたいんだとしたら、ブレストのときには上下関係なく突っ込み合っていいよ、タメ口でいいよという文化にすればいい。そこに共感した人たちが集まってくると、意図した関係性が築きやすいです。
インタビュアー:結果を出す、数字を上げる社員は採用の段階でどう見極めればいいんでしょうか?
石山:これはズバリ「質問の深さ」ですね。本当に自分がそのポジションに立って、その仕事をやるという前提で話を聞いている人は『もし自分がこの会社に入って、この事業を担当するなら、ここが分からないな』と具体的な部分まで想像できているので、「どんな取引先がありますか?こういうツールは使えますか?社内のリソースって貸してもらえるんですか?」など細かいところを聞いてくれるんですよ。逆に、受け身で、言われたことだけやろうという人は、質問はほとんどしないです。本当にそのポジションで責任を果たそうという意志があったら、たとえ初対面の採用面接の場面だったとしても、かなりいい質問を投げかけてきますよ。
「私がこれをやるんだったら、こういうところがちょっと分からないんですけど」とか、「こういう場合ってどうなんですか?」とか、「似たようなところを今の会社でやっているんですけれども、こういう場合はこうなるケースが多いんですけど御社では違うんですか?」とか、具体的で深い質問をたくさんしてくれます。聞いているこっちは、この人は本気で責任を持ってやる気があるんだなと感じますよね。ですが、ほとんどの場合は質問ありますかと聞いても、「あ、大丈夫です!」と答える人ばかり。反対にこちらが「あなたが大丈夫ですか?」って心配になります(笑)質問をしてこないということは、そこまで真剣に考えていない、やる気がないと感じますから、基本は採用しないですね。
インタビュアー:面接のときの相手の主体性で、ある程度スクリーニングできるということですね?
石山:主体性というか、質問の深さですね。採用の段階で、相手の質問の量と質を観察すれば、有能な人材かどうかを見極めることができます。
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