2015.06.2
家庭や職場など、日常の中で起こる出来事をどのような仕組みで認識し、判断しているのかを自覚しながら生きている方は殆どいらっしゃらないと思いますが、実はそこには、人類共通の”脳の認識のクセ”が大きく影響しています。
目次
人類共通の脳の認識のクセを大別すると3つのパターンがあります。
①部分だけを認識する
②違いだけを認識する
③過去とつなげて認識する
それぞれ、どういうことか、体験しながらみていきましょう。
この四角の中の点をつなげて花をかいてください、といったらあなたはどんな花をかきますか?ペンをお持ちの方は実際にプリントアウトして記入してみてください(点はいくつつなげてもOKです)。
ちなみに他の人がどんな点をつなげて花をかいたかというと・・・
こんな感じでした。
ある人は、花びらがある花を描き、またある人は漢字で花と書く。なかには葉を付けた花を描く人もいます。
このように、どの点をどのようにつなぎ合わせるのかによって、できあがった花はまったく違う花になるのです。
この点を「ある事象」と見立てると、点と点をつなげてできあがった花は思い込みや先入観を意味します。
警察では「初動捜査の思い込みは禁物だ」と言われますが、人間の脳は一旦思い込んだことに合わせて事実を解釈する傾向があります。例えば、嫌な上司だなと思い込んだら、部下を育てる為の厳しい言葉も小言に感じるし、愛情をもって接してくれる態度もうっとうしいおせっかいだと認識してしまいます。
例えば、ドラマのような話ですが「火葬場で焼かれて灰と骨だけになった父の遺体のなかから、ハサミのような医療器具が見つかった」「父の手術に立ち会った医師のうち1人が、父の手術後にすぐ医者を辞めている」という事象をつなぎ合わせて、「辞めた医者が医療ミスの犯人だ」と思い込んだ人がいました。
その医師を父の仇だと信じて探し出し、殺そうとしたら「実はこの医師は犯人ではなく、医療ミスを告発しようとしたら、病院をクビになって医者を辞めた」ことが判明し、自分が絶対視していた世界の認識(パラダイム)が180度ひっくり返されることだってあります。
さっき描いた花のように、私たち人間は自分が認識した事象だけをつなぎ合わせて、それぞれが自分勝手な思い込みをつくります。
また、可視光線や可聴領域など限定された範囲の情報しか捉えられないという五感覚の限界もあるので、相手の表情・言葉・行動など見えたり聞こえたりするものを知覚することはできても、その背景にある判断基準や世界観、連想しているイメージは簡単には見えません。
このようにして、自分の経験したこと、自分が見た・聞いた情報だけをつなぎあわせて、自分勝手に思い込み、先入観を生み出し、それを基準に人生を生き、様々な選択・判断をするようになるのです。
この絵は手前と奥、どちらのケーキが大きく見えますか?
(https://illusion-forum.ilab.ntt.co.jp/size-constancy/index.htmlより)
奥にあるケーキが大きく見える方がほとんどだと思います。
実は部屋の奥にあるケーキと手前にあるケーキは同じ大きさですが、遠近法からくる思い込みがフィルターとなって奥のケーキが大きく見えてしまいます。同じサイズのはずなのに、周りのものと比較してしまって「違う大きさ」のように見えます。
では、仕組みがわかった上でもう一度図を見てみてください。この仕組みを理解したら同じサイズに見えますか?
同じサイズには見えませんよね。これがまさに脳の機能のひとつで、同じ大きさだと頭で解かっていても「違って」見えてしまうのです。
こういう錯覚の絵に慣れていらっしゃる方も多いかも知れませんが、現実でも年が近い同僚と比較して部分だけを取り、ちょっとした違いをとって、「あいつの方ができる/できない」と判断することはないでしょうか?
仕事以外の面や、影の努力を無視して結果という「部分」だけを見て、自分との「違い」を比較して判断してしまうのが脳が常にやっていることです。
ある口が利けない人が歯ブラシを購入しようとしています。彼は歯を磨くジェスチャーをして、店員にうまく伝えることができたので目的の歯ブラシを買えました。
次に、ある目の見えない人が、自分の目を隠すためにサングラスを買おうとしています。さて彼はどんな風に表現をすれば、うまく店員に意図を伝えることができると思いますか?
考えてみましょう・・・・
どんな答えになりましたか?
サングラスをかけるようなジェスチャーをするという答えた方もいらっしゃるかもしれませんが、 彼の場合は『サングラスをください』と口に出すのがよいというのが正解です。
実はこの問題にはトリックがありました。
サングラスをかけるようなジェスチャーをすると答えた方は、お店にきた二人は別人であるにも関らず、勝手に「過去とつなげて」2つ目の問いの前提条件に(脳が無意識のうちに勝手に)1つ目の「口が利けない」や「ジェスチャーをする」を入れて考えてしまったことにあります。
無意識のうちに「過去とつなげて」考えてしまうのが脳の認識の癖のやっかいなところです。
次の例は、「港区に住んでる女性とは付き合いたくない」という男性の話です。その理由は、「自宅が港区にある女性は、遊び人で軽い人が多いから」ということでした。
さらにその理由を尋ねると「これまでに出逢ってきた人が皆そうだったから」「あと、友達の意見も同じだったから」ということでした。彼と彼の友達の観点では過去の経験、相手のイメージとつなげた結果、「港区の女性=軽い」という自己流の論理が「事実」となっていたようです。もちろん、港区にお住まいの女性全員がそうである訳ではありません。
このように、自分が認識した「部分(事象)」だけをとり、他の区に住んでいる同年代の女性との「違い」を比べて、これまでに付き合った人の「過去のイメージ」とつなげて思い込み(本人の認識では事実)を創造しているのが脳の機能的な特徴です。
人類共通の脳の認識のクセには3つのパターンがあります。
①部分だけを認識する
②違いだけを認識する
③過去とつなげて認識する
この脳の認識のクセは、人間だったら誰もが生まれた時から初期設定されている人間共通の脳の機能なのでどうすることもできません。
部分(点)だけ認識して、思い込みの花を描いてしまうこと、違いだけをみて解釈してしまいやすいこと、無意識に過去とつなげて目の前の事象を判断していることを考慮に入れて、思い込み(錯覚)にはまらないよう過ごしていきましょう。
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